デカダンス

日記のような、短編のような、詩のような、俺

半年に一回ぐらいの周期でやってくる全ての人間を嫌いになってしまう現象が今日やってきた。すれ違った良い匂いがする清潔可憐な女子大生も、顔は何回も見たことあるのに名前は知らない無口な男子大学生も、浮き足立つ一部の世間の中で泣いているかもしれない俺を心配して、地元から手紙付きでカップラーメンやお菓子を大量に送ってきてくれた家族も、誰でも良いから無性に誰かと喋りたくなる夜にラインをくれる俺が一方的に友達というカテゴリの中へ入れ込んでいる数人の人間も、今日は全員嫌いになってしまった。疲れてしまった。

 

昨日の夜は隣の部屋の男が夜中の3時ぐらいまで友達と馬鹿騒ぎをしていて、ほとんど眠れなかった。腹が立って壁を蹴ると一瞬だけざわめきが静かになったが、すぐにうるさくなって、諦めて我慢して悲しくなった。今朝、そいつの高そうな自転車を軽く蹴っておいた。

 

今日、授業中に眠気のせいでぼーっとしていて、教授の出した指示を全く聞いていなくて、目の前に広がる三次元空間のどの座標にも焦点を当てずに全体をぼんやりと眺めていると、隣にいた気の強いどこか不満げな女っ気と可愛げが全くない見知らぬ女子大生に早く動いてと指図され、何を言ってんだこいつはと思い、あん?とだけ生返事を返してそのまま突っ立ていると、心底呆れ果てたのかその女は何も言わずにおっさんのようなため息をついた。

 

カニちゃんから自作の曲が送られてきて、まともな感想を言える心の余裕がなかったので、というか他人ばかりを褒めるのが疲れたし今日は本当にそういうのが嫌だったので、テキトーな返信をしたら、いつものように既読無視をされて、そうだよな、そんなもんかって妙に納得した。

 

サークルの忘年会の日程調整で一人だけいつまでたってもラインの返信をしない同期のそこそこモテそうな女の子が1日後ぐらいにラインをしていて、なんだかとても腹が立ったし、他にも楽しい予定だらけの年末年始なんだろうなぁとか生きるのうまいよなぁとか思ったりして羨ましくて悲しくて、劣等感が溢れ出した。

 

鏡に映った自分の顔がいつにも増して老けて見えた。自分がまだ十代であることが信じられないぐらいに顔が不満と疲労で満ちていていつかのように悲しくなって眠たくなった。自転車を盗まれたので、今朝、音楽を聞きながら歩いて大学へ向かっていると、自転車に乗って並走する男女が俺の歩くすぐ横を勢いよく通り過ぎていった。俺はいつまでたってもどれだけ頑張ってもどれだけ叫んでも所詮負けっぱなし組で、あの二人には永遠に追いつけやしないのかぁとか思って悔しくて悲しくなって顔に冷たい風が吹きつけた。

 

いつもは誰よりも何よりも優しくて射精してしまうほどかっこいいバンドの雑音も、今日はなんだかうるさいだけで俺を助けてくれなかった。仕方なくなんとなく手を伸ばした久石譲のSummerが今の心に一番ちょうどよくて心地よくて、何度も聞いていると高二の夏を思い出した。はしゃいでいる周りの奴らが気持ち悪くて、学祭の日に誰もいない静かな場所を求めてカニちゃんと二人で外に出た。体育館裏の小さな日陰で、お母さんが作ってくれたお弁当を食べながら、Summerを聞いていた。空が鮮やかな水色で、雲はふわふわで真っ白で、風で揺れる緑の木々はとても優雅だった。

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悲しくても、友達かもしれない人間ぐらいは頑張って好きでいなきゃ