デカダンス

日記のような、短編のような、詩のような、俺

メローリー

 寝不足と射精でぼやけた目をこすりながら、習いたての幼稚な熱力学を振りかざし、紙の上でひたすら理論熱効率を求めた凡庸な午前中。スラスラと鮮やかに導かれていく煩雑な計算式、安いシャーペンが滑る音、陽が出ているのに、窓に映る風景はなんとなく寂しい。メガネの教授は黒板に必死で、”退屈って名前の怪物"、を描いている。

 

 授業が終わると、すぐに、外に出た。愛車のキーを人差し指で、くるくると回しながら、辺りをキョロキョロ。あったあった。鳥のフンがこびれついた、一万弱の愛妻号。見えないクラッチを踏みながら、僕は勢いよく走り出した、誰も待っていない、砂のお城へ。空腹が防犯ブザーみたい鳴りっぱなしだけど、そんなこと、どうでもいいぐらいに、ひんやりとした風が気持ちよくて、聞こえるのは追い抜いていくトラックの音だけ〜。左のブレーキはぶっ壊れてて、右のブレーキは効きすぎる、だから丁度いいし、いつだって好きな時に止まれるのさ。いつのまにか、ベルは消えていたけど。そんなの知ったこっちゃねぇ。今日も空にはカラスが飛んでいて、もうちょいで死ぬだろうおばちゃんは一生懸命庭の手入れをしていて、白黒のきったない野良猫は、ゆっくりとコンクリートの海を行く。僕は、そんな景色を横目に、リビドーという名の悩ましい少女のことを考えるんだ。

 

 ガタンと大きな音がして、ドアが閉まった。いつもちょっとびっくりする、誰かに閉じ込められたんじゃないかって思っちゃう。この狭い狭い空間に、誰かが僕のことを閉じ込めてるんじゃなないかって、本当は僕以外誰もいないのに。生乾きの洗濯物は見て見ぬ振りをして、電子レンジの上に置いてある50口径の食パンは残り6発、明日の朝、引き金を引こうか。歪んだ現実を全て吹き飛ばしてやる。

 

 偉そうな机の横に、かばんを放り投げて、ジャケットは、ベットの上にホイ。汚れちまった手を水洗いして、一回だけエアイソジンでうがいをする、ガラガラっと。さぁ、お湯を沸かしましょうかしら、お父上、今日のランチは何かしら、和えるだけたらこ風味パスタだよ。またかよ。ため息をつきながら、僕は、ちっとも美味しくないパスタを下品にすすった。まるでラーメンを食べるみたいに。というかそれよりも、お皿が、、、、臭い。でも、なんとか食べ終えて、ごちそうさまでした、とぶっきらぼうにホキ捨てた。はぁ〜〜〜〜と一息ついていたら、淀んだ満腹のかったるさに気が抜けて、煙が立ちそうなぐらいの大屁をぶっ放した。湿った虚しい音と、孤独な鼻笑いが窮屈な天井に優しく轟いた。たちこめたのは、不安と憂鬱のこもった悪臭だった。

 

 小さなサッカー選手を右へ左へせっせと動かしていたら、いつの間にか日が暮れていた。さっき昼飯を食べたばかりのはずなのに、もうお腹が空いてきた。つくづく傲慢な胃袋だ、切腹を命じる。いつまでもバカなこと言ってないで、と誰かが耳元で囁く。実家から送られてきた大量の支援物資を漁りながら、心配ばかりかけてごめんね、と段ボールに向かって力無く呟いた。台所の蛍光灯をつけると、ゆっくりとまた今日が終わっていく感じ。蛇口から流れる水は驚くほど冷たい。

 

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